急速に拡大する中国人の「訪日医療ツアー」と翻訳の需要について

執筆:李 東偉(董事、東日テック株式会社 代表取締役)

中国人観光客の「爆買い」から「爆検診」へ

「中国人観光客が大量に商品を購入する行為」が新聞やテレビで大々的に報道され話題となり、「爆買い」が2015新語・流行語大賞の年間大賞に選ばれたことはまだ記憶に新しいと思いますが、その勢いは長く続かず、2016年の後半になるとメディアでは「爆買い失速」といったようなタイトルの記事が目立つようになり、さらに2017年になると、沢山の買い物袋を両手に持って街を歩く中国人観光客を、実際にもほとんど見かけなくなりました。

しかし、そうした「爆買いバブルの終了」とほぼ同時に、中国人観光客のなかには、日本の医療サービスを受ける人が増え始めています。

医療サービスを受ける行為は、街で直観的に目に見てとれる爆買いとは違って、病院や医療機関などでしかその現象を実感できません。病院で健康診断を受けたある日本人は、あまりにも大勢の中国人の健診受診者の数に自分がいま日本にいるのか中国にいるのかが分からなくなり、たいへん驚いたようです。最近、このような現象を「爆検診」という人もいます。

中国の海外医療ツアーの需要

近年、中国の富裕層の間では海外で医療サービスを受けることに関心が高まり、海外に渡って医療サービスを受ける人が急増しています。その多くは、医療ビザではなく一般の観光ビザで海外に渡航して「観光のついでに」医療サービスを受けているため、具体的な人数については信頼性の高い統計データがまだありません。

しかし、中国の大手検索サイト「百度」で調べたところ、中国の中商産業研究院(ASKCI)の「2017年中国海外医療市場規模データ分析」の報告書には、以下のような記載がありました。

中国人の訪日爆買いが終了して間もなく、最近は訪日して医療サービスを受ける“医療旅行”が流行し始めた

2020年には医療旅行を目的に訪日する人が31万人を超えるだろう

実際、私の周辺にも2017年の後半から中国人訪日医療ツアー客と日本の医療機関を仲介する業務を始めた友人がおり、彼らの話によると「いま日本の人間ドックが中国人に特に人気が高く、今年に入ってから問い合わせが多くてとても忙しい」とのこと。また他方では、これをビジネスのチャンスとして多くの在日中国人がその仲介業務に参入し、料金面での競争が非常に激しくなっているようです。

医療翻訳・通訳の重要性

中国人訪日医療ツアー客が増える背景として、以下のような理由が考えられます。

  • 中国国内の先端医療設備や先端医療技術を有する医療機関の不足
  • 中国国内の医療機関のサービス品質の問題
  • 中国人の収入増加による経済的な余裕

一方、日本政府も2010年から医療観光を促進するために医療滞在ビザを創設し、各地方自治体も相次いで医療観光推進プロジェクトを立ち上げるなど、全国で医療観光に対する意識が高まっており、今後中国人訪日医療ツアー客が益々増えると推測されます。

東京には人口が集中しているため、日本人の受診者だけでも待ち時間が長く、これ以上の受診者は歓迎されない病院もあることでしょう。しかし地方に行くと状況がガラリと変わります。

利用者が見込めないため高価な先端医療設備を導入できない病院や、高価な先端医療設備を導入したが利用者が少ないため維持費用が大きな負担となり困っている病院は少なくありません。外国人訪日医療ツアー客をそのような地方に誘致できれば、このような地方の病院のかかえている問題を解決でき、また地方の活性化にもつながります。

課題もあります。中国人訪日医療ツアー客のほとんどは日本語が話せません。彼らが病院で診察や治療を受ける際には必ず通訳が必要です。また、人気の高い人間ドックは検査報告書を中国語に翻訳してから中国人訪日医療ツアー客の受診者に渡さなければなりません。これらの通訳と翻訳は、ただ「日本語と中国語が分かれば対応できる」というものではなく、専門の医療知識が必要になります。

今後中国人訪日医療ツアー客の増加に伴い、いまも不足している和<>中医療翻訳・通訳の人材はますます足りなくなり、特に地方において、人材不足が深刻な状況になることは疑いの余地もないでしょう。大連雅訳日中翻訳のプロフェッショナルの会社として、このようなニーズに応えるために医療翻訳・通訳の体制を強化し、日本の医療観光の発展にも貢献できる会社を目指しています。

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大連雅訳は、日本の翻訳会社・5社の出資によって作られた中国の翻訳会社。品質管理・事務対応・決済方法、すべてを日本のお客様のために設計しています。

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