特許大国化する中国と米中貿易摩擦

大統領は発明家?

今回は少し珍しいものをご紹介させていただきます。

米国第 16 代大統領・エイブラハム・リンカーンといえば、奴隷解放を成し遂げた大統領として有名ですが、本人自身が発明家であり特許も取得していたことは、実はあまり知られていません。

興味がありましたので、米国特許商標庁(United States Patent and Trademark Office: USPTO)のデータベースにアクセスし、実際にリンカーンが取得した米国特許明細書を探してみました。

この特許発明は「舟艇の浅瀬航行を可能にする技術」に関するもので、「両舷に取り付けた浮き袋を浅瀬に差し掛かった時に膨らませて喫水を下げる」というものです。最近のハイテクとはひと味もふた味も違いますが、発明というものの原点を見る気がします。

使われている英語表現は現代の明細書のものと変わりはなく、そのまま教材にもなりそうです。

読み込んで見ると、冒頭に “I, Abraham Lincoln,” の記載があります。憲法により、発明者に栄誉が与えられ発明者しか特許出願人になれなかった旧米国特許法の精神を垣間見ることができます。

対立深まる米国と中国の貿易摩擦

さて、発明を尊ぶ米国憲法の精神の発露というわけでもないと思いますが、「中国が知的財産を守らない」ことを理由に中国に対して関税戦争を仕掛けたのは昨年のことです。

Trump, China trade war: tariffs on all Chinese goods if Xi talks fail – Business Insider – https://www.businessinsider.com/trump-china-trade-war-tariffs-on-all-chinese-goods-if-xi-talks-fail-2018-10

ボクシングで言えば最初のジャブを放ったのは米国のトランプ大統領でした。

中国もこれに対抗して米国からの輸入穀物などに対し関税を引き上げ、その後ボクシングで言えばジャブの応酬からクリンチの膠着状態が続き、次の一手として米国が繰り出したボディーブローが中国の華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)への締め付けでした。

そのファーウェイが、今度は、米国通信大手のベライゾン・コミュニケーションズに対し 10 億ドル(約 1,080 億円)のライセンス料を請求しているとの報道が 2019 年 6 月初旬にありました。ベライゾンが IoT(モノのインターネット)などに関するファーウェイの特許技術を使用していることに対する請求であるとのことです。

ベライゾンが応じなかった場合、大型の知財訴訟に発展する可能性があります。「中国は知的財産を尊重しない」という米国の主張を逆手にとって、「尊重しないのはお前の方だ」とカウンターパンチを中国が放った格好です。

特許大国化する中国の存在感

中国は今や特許大国です。ファーウェイは 2018 年には前年比 14% 増加の 1,680 件の米国特許を取得しており、今後も知的財産を活用した経済攻勢を強めるものと思われます。

米中経済戦争の裏には知財戦争があること、知的財産制度の本家本元である米国が知財戦争において反撃を受けつつあることは、ある意味、皮肉なことです。

今年はリンカーン没後 145 年目。ワシントンDCの記念堂に鎮座する、かの米国大統領は、果たして何を思うのでしょうか。

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